はじめに

いつも自衛官生活支援会のブログをお読み頂きありがとうございます。転勤が多い自衛官にとって、ご両親のことは心配ですよね。でも、ご両親も「身体が動くうちは大丈夫」と思っていませんか。身体よりもっと困るのが「認知機能」の低下です。「認知症」と診断されると、とても大変です。「認知症」になる前と、「認知症」発症後の対応について分かり易く解説します。

「認知症」になると大変です

本人が気づかないうちに認知症が進行している場合もあり、手遅れになってしまうこともあるようです。さらに、本人だけでなく、周りも少しおかしいなとは思いながらも深刻さに気付かない場合が多くあります。

こんな例があります。「ある日、銀行にお嫁さんと一緒にお金を引き出しに行ったら、自分の名前を書くのに苦労するおじいちゃん。それを見た行員さんからお医者さんの受診を求められ、診断を受けたら、何と『認知症!』と診断。それ以来、口座からお金は引き出せなくなり、成年後見人を付け、とても大変な思い」をした方がいらっしゃいます。
近くにいるお嫁さんでも、気付かなかったのですから、遠くに離れているご家族がその状況を把握するのは更に難しいですよね。

「認知症」になった時の対応は

「認知症」になったら、成年後見人を家庭裁判所で選んでもらいます。後見人には、認知症になった方の財産管理や法律行為を代わりに行う代理権と取消権が与えられます。取消権とは、被後見人が行った法律行為を取り消すことができる権限です。

成年後見制度が必要になる主な場合は、①預貯金の管理・解約②介護保険契約(施設入所等のため)
③身上監護④不動産の処分⑤相続手続などです。

後見人は、親族が選ばれることは少なく、被後見人の権利を保護するために弁護士や司法書士などが後見人となることが多いです。後見人は一義的には被後見人のために財産を使う以外は支出を認めません。例えば、子どもが自宅購入時に親から支援をもらう約束をしていても、親が認知症になり、後見人が付いてしまうと、そのお金は被後見人のためのお金でないため、支出が認められない可能性があります。極端な例では、後見人が奥さんの医療費の支出を認めなかった例があるようです。

「認知症」になる前の対応が大切

「認知症」が確定してしまうと、ほぼ、成年後見人を家庭裁判所に選んでもらう他の手段はほぼありません。ですので、「認知症」が確定する前に色々な対策をすることが、とても大切です。

①任意後見制度を利用する

成年後見制度は法的な行為ですが、任意後見は成年後見と違い、契約行為なので、親族とも契約(公正証書を作り登記が必要)を結ぶことが出来ます。そして、認知症かなと思ったら、裁判所に申し出て、「任意後見監督人」(後見人が不正を行わないか監視する人)を選任してもらうと、成年後見の仕事を引き続き任意後見人が行うことが可能となり、事情をよく理解した継続したサポートが可能となります。

任意後見制度では、任意後見人を誰にするかどんな内容を依頼するのか、全て自分で決めることができます。そのため、判断能力低下した後も、今までの生活スタイルを維持できるとい利点があります。

しかし、この契約は必ず、最寄りの公証役場に赴き公正証書で契約書を作成します。公正証書の契約でない場合は無効となります。

②家族信託を利用する

家族信託は、認知症の前に設定しておけば、認知症発症後の財産管理だけでなく、相続などについても対応可能な仕組みです。一例としては、親御さんの財産を信託財産として息子さんなどの受託者に託し、信託財産から得られる利益を親御さん受益者)が受け取るというものです。財産はすでに信託財産になっているので、親御さんが認知症になっても、万が一のことがあっても、信託を設定する時の契約の内容に従って処理されます。ただ、相続の場合には遺留分は発生しますので、注意が必要です。
また、民事信託を設定する場合に、司法書士などにお願いしますが、手数料(財産の1%くらい)が必要になります。

一般社団法人 家族信託推進協会

まとめ

「認知症」と診断されると後見人を選定したり、とても大変なことになります。また、後見人を選定した後も家族にとっては不本意な事態が発生する可能性がありまり、その事例などをお伝えしました。まずは、「認知症」になる前に色々と対策を取ることが大切です。その一例として、「任意後見」と「家族信託」をご紹介しました。是非ともご検討ください。

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