1.はじめに

 いつも自衛官生活支援の会のブログをお読み頂きありがとうございます。今回は定年退職について視点を変えて考えてみました。
 自衛官の50代後半の定年退官は、「異文化への転換と再出発」と考えた方が良いかもしれません。自衛隊には再就職を支援してくれる組織があり、転職先は援護という形で組織的に紹介してもらえます。しかし、紹介先は多くの場合、今までの環境とは大きく異なる職場で、ご自身の今までのスキル、性格や特性と合っているかは別物です。さらに、自衛隊の文化や風習とは大きく異なることが多くなりそうです。
 そう考えると、自衛官の定年退官は、単なる退職&転職ではなく「異文化への転換と再出発」と捉える方が良いのではないでしょうか。

2.自衛官の再就職について

 自衛官の再就職については、防衛省や自衛隊が積極的に支援を行っています。最新のデータによると、再就職率は非常に高く、任期制自衛官の場合は99.0%、若年定年自衛官の場合は98.6%となっています。

 再就職先の分野は多岐にわたり、約41%がサービス業、約17%が公共事業、約14%が製造業に就職しています。また、地方公共団体の防災や危機管理の分野でも活躍する自衛官が増えています1。

ただ、せっかく決まった再就職先を、早期に後にする人は少なくないようです。再就職後半年以内の離職率は約10%。つまり、10人に1人は再就職から半年も経たないうちに、再就職先を離れるとのことですし、私の感覚としては、3~4年のうちに1/3は離職してしまう方が多いのではないでしょうか。

★自衛官の定年年齢は階級によって異なります。現在の定年年齢は以下の通りです

1佐: 58歳、2佐: 57歳、3佐: 57歳、1尉: 56歳、2尉: 56歳、3尉: 56歳、准尉: 56歳
曹長: 56歳、1曹: 56歳、2曹: 55歳、3曹: 55歳

 一般の50代以上の転職環境について、 厚生労働省の「令和3年雇用動向調査結果」によると、50代の転職成功率は50~54歳の男性で5.1%、女性で10.0%。55~59歳では男性で6.0%、女性で7.8%と低い数値となっており、一般の再就職者に比較すれば、自衛官の再就職率95%越えはかなりくなっています。これも、自衛隊が組織的に援護を実施している成果だと思います。

3.転職先の勤務環境や文化・風習

定年退官後の就職先は、民間企業が一般的で、自衛隊とは仕事の仕方が違います。

①自衛隊は明確な命令で動くが、民間は曖昧な指示で動く

自衛隊では、上司からの命令(何を、何時までに、どのように行うかなど)を示されますが、民間では、単純作業以外の多くは曖昧な指示です。そのため、警備や車の運転などの仕事は内容や時間が明確なので、自衛官には向いている仕事だと思います。ただ、営業などの仕事は、範囲も内容も曖昧なため、自分が判断して仕事を進めるため、あまり向いていないと感じています。

②民間は利益を優先する

自衛官は、任務遂行が第一でそれを実行する資源については、ほぼ考えません。一方、民間は儲けがあるか、それも他と比較して効率よく利益を上げれるかを考えます。ある仕事に投下する資源(人、モノ、金、時間など)をいかに効率よく回収し、プラスの利益をもたらすかが重要なポイントです。

③とりあえず集まる会議が多い

プロジェクトと称して、ブレーンストーミング形式で意見を出し合う会議が多く、長時間を費やす。誰も明確な指針を示さないので、何をやったら良いか分からず、ただ集まって話す。自衛隊であれば、担当が案を作成して、上司の指導を受けて、それから会議のテーブルに乗せるのですが、それは民間では、ほぼありません。自衛官ですと、このやり方にはイライラするため、つい口出しをし、周りから顰蹙をかうことがあります。

④再就職先の上司はほぼ年下

再就職先では、上司はほぼ年下です。このため、新人で入った気持ちで、こちらからしっかり挨拶し、面倒なことも積極的に引き受けることが重要です。

4.定年退官は「異文化へ転換と再出発」

 以上のように、民間は自衛官時代とは、仕事の内容の違いや、環境・文化の違いがあります。そのため、自衛官と同じ文化や考え方とは違う、異文化に慣れることが大切です。自衛隊の価値観に囚われていると、周りと軋轢が生じ、自分にもストレスが溜まります。また、上司が年下のため、自衛隊での自分の階級は脱ぎ捨てて、新人のつもりで職場に飛び込むことをお勧めします。

5.まとめ

自衛官の50代後半の定年退官は、「異文化への転換と再出発」と考えた方が良いとのお話をしました。自衛隊を定年退職してからの再就職は、ほぼ皆さんが通る道です。再就職を支援してくれる組織があるとはいえ、今までの環境とは大きく異なる場合が多く、馴染めないことも多くあると思います。また、これから退官を迎える方は色々とご心配なこともあるかと思います。そのような場合は、自衛官やOBが集う「J-スタディ」(キャリアとマネーの集い)を作っておりますので、もし、よかったら下記より内容をご確認の上、ご参加下さい。お待ちしております。