はじめに
自衛官生活支援の会のブログをお読み頂きありがとうございます。よくキャリアという言葉をお聞きになると思います。今日はキャリアとは何か、このキャリアを判断するポイントはどんなものか、そして、自衛官をどんな準備をすればよいかについて、お伝えしたいと思います。
まずは結論から
キャリアとは、働くことにまつわる「生き方」そのものです。そしてそれを判断するポイントが以下の5つあるといわれているようです。
1. 「技術・知識を示す経験」
2. 「転職回数や社格などを含めた転職履歴」
3. 「日本特有の判断基準である年齢」
4. 「人となりを表す考え方・人間性」
5. 「外的要因である景況感とトレンド」
自衛官として定年を迎え、再就職に向けて準備することは、自分の棚卸です。今までの自衛官人生を振り返って、どんな強みや、スキルなどがあるのかを見つめることです。
「キャリア」と何か
「キャリア」いうと、「キャリア官僚」などと言うように、「出世」のイメージがありますよね。私もキャリコンの資格を取るまでは、何となく分かりにくい概念だなと感じていました。もともと「キャリア」は中世ラテン語の「車道」を起源とし、英語で、競馬場や競技場におけるコースやそのトラック(行路、足跡)を意味するものであったそうです。そこから、人がたどる行路やその足跡、経歴、遍歴なども意味するようになったようです。
厚生労働省『キャリア形成を支援する労働市場政策研究会』報告書によると、キャリアの概念として「本来キャリアとは、就職・出世・現在の仕事等の点や結果を指す言葉ではなく、働くことに関わる「継続的なプロセス(過程)」と、働くことにまつわる「生き方」そのものを指している。つまり、キャリアを積むということは、この仕事の経験を積むという事だけではなく、その仕事に取り組むプロセスの中で、身につけていく技術・知識・経験に加えて、人間性を磨いていくこと、そしてプライベートも含めた自分自身の生き方を磨いていく事。」とされています。つまり、結果ではなく「継続的なプロセス」で、「生き方」そのものを指すということです。
キャリアを判断する5つのポイント
① 「技術・知識を示す経験」
自衛官の場合は、経験と言われても民間に出て技術や経験ってあるのだろうかと思う方がいるかもしれません。しかし、自衛官は組織で仕事をしますので、基本的なコミュニ―ケーションレベルやルールを守る思いは民間以上だと思います。
任期制隊員の方は、まだまだ若い時期に民間に出て行くので、会社としても今後、育てることも十分に視野に入っていると思います。そのため、スキルよりも性格よりも人柄重視だと思います。
また、定年で退官する方は、職種や職域は民間から見ると、専門家と受け取られる場合があるようで、自衛隊での経歴や経験が評価される場合もあるようです。
② 「転職回数や社格などを含めた転職履歴
自衛官は一般に転職はありませんので、社格の変化はありません。しかし、OBとしての実感としては、自衛官を定年まで勤めあげる信頼感はかなりのものと感じています。
③「日本特有の判断基準である年齢」
任期制隊員の方は、若い時期に民間に出て行くので、会社としても今後の育成を重視していると思いますので、自衛隊という組織でチームワークを学んだ人材は是非とも欲しいところでしょう。
定年で退官された方は、即戦力を求められると思います。そのため、自分には何が出来るのか、自分の適性は何かなどを知ることから始めて、そして、不足すると感じた場合はスキルアップや新しいスキルを身に付けることが重要かもしれません。
4. 「人となりを表す考え方・人間性」
少なくとも自衛隊の組織の中で、勤務できたという実績は、民間企業にとっては魅力的だと思います。
リクルートの調査では、2019年度の新卒採用1人当たりの平均採用コストは93万6,000円、さらに、中途採用では2019年度では1人当たりの平均採用コストは103万3,000円とのことです。そして、採用しても厚生労働省が2020年に報告したデータによると、2019年における入社3年以内の離職者は約3割となっており、高いコストを掛けて採用しても30%は入社後3年以内に退職してしまうのです。その点、自衛隊という厳しい環境で勤務できたという実績は、会社にとっては安心材料です。
また、定年で退職された方は、ご相談させて頂いていても、再就職で転職先を辞める方は多く、その理由の一番は仕事内容のミスマッチです。内閣府の調査によっても、仕事内容のミスマッチが原因で離職する人は、離職者の約半数にものぼることが分かっています。自分の適正と配属部署・与えられた役割が合っていないと感じて、会社を退職する新入社員は非常に多いということです。
これを防ぐには、退職前にご自分の適性などをよく知ることが大切だと思います。
5. 「外的要因である景況感とトレンド」
現在は、人出不足で売りて市場だと言われています。しかし、これは業界によって違いがあります。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年4月分)について」を見ると、(※)有効求人倍率は、人材が不足している業種では、土木5.6倍、介護3.4倍、サービス2.8倍である一方、人材が過剰な業種では一般事務0.35倍、会計0.67倍と大きな差があることが分かります。
(※)有効求人倍率:求職者1人あたり何件の求人があるかを示すもの
また、経済産業省によるIT人材数の推計では、IT関連産業への入職者は2019年をピークに減少し、2030年には最大約79万人もの人材が不足すると予測されています。
また、自衛官の定年年齢が伸びており、これ自体はとても良いことです。しかし、定年年齢が高くなれば、下記の調査からも分かるように、採用予定の人材年齢は40代~50代については27.2%、60代については12.5%となっており、企業の求人の数が減るのではないかと懸念されます。
中途社員を採用予定の企業に対する採用する想定の人材(複数回答)の調査
★X(旧Twitter)にも投稿しました。
よく「キャリア」というと、「キャリア官僚」などと言うように、「出世」のイメージがありますよね。私もキャリコンの資格を取るまでは、何となく分かりにくい概念だなと感じていました。もともと「キャリア」は中世ラテン語の「車道」を起源とし、英語で、競馬場や競技場におけるコースやそのトラック…
— J-スタディ(自衛官,OB,自衛隊サポーターのキャリアとマネーの学びと交流の場|自衛官生活支援の会) (@j_life_salon) November 1, 2023
今後、自衛官として定年を再就職に向けて準備すべき事項は何か
自衛官が定年を迎えるのに、必要なことは再就職に向けて自分の棚卸です。これは、今までの自衛官人生を振り返って、どんな強みや、スキルなどがあるのかを見つめることです。そして、自身の今後の夢やビジョンを実現するうえで、どんなことが必要なのか、どのくらいの時間を掛けて実現するかを考え、その中で、再就職の仕事を位置づけることが大切ではないかと思います。再就職の仕事を将来の夢やビジョンの実現に活用するのです。
まとめ
今日はキャリアとは何か、このキャリアを判断するポイントはどんなものか、そして、自衛官が退職して再就職する際に、どんな準備をすればよいかについて、お伝えしてきました。しかし、それぞれの個人により、歩んできた人生・経歴、性格、強みも違います。是非ともご自分を振り返りながら、進まれることをお勧めします。もし、ご自身では難しい場合は自衛官生活支援の会にご相談ください。色々なプログラムをご準備しております。
今回のブログをお読みになり、今後のキャリアなどについてお悩みの方は、自衛官OBのFPがご相談に乗ります。以下から無料相談をお申込み下さい。
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