1.はじめに
いつも、自衛官生活支援の会のブログをお読み頂きありがとうございます。今回は「キャリア・マネープラン」についてです。
キャリアは、一般には「経歴」や「経験」と表現され職業を中心としたものですが、ここでは個人の生き方(遣り甲斐)、働き方なども含めています。さらに、「キャリア・マネープラン」とは、人生を充実した生き生きとしたものするには、職業・生き方(遣り甲斐)とお金との両方が必要で、まさに車の両輪のようなものです。
2.なぜ今、「キャリア・マネープラン」なのか
自衛官の方のご相談を受けていて、強く感じることは、お金のプランと仕事や生き甲斐のプラントは切り離せないということです。
自衛官は55歳前後での退官となり、平均寿命(2021年、男性81.41歳、女性87.45歳)までの時間は男性の場合は26年、女性の場合は32年もあります。また、55歳前後はまだまだエネルギーがあり、その気になれば、これからもうひと人生が出来る年齢です。今後、益々、寿命も延びる可能性が大きく、退官後の時間が増え続けると思われます。
この時間を楽しく生き生きとしながら充実した人生を過ごすには、まずは健康が大切です。そして、「生きがい」と「生活に困らない少し余裕があるお金」も欠かせない要素となります。この「生き甲斐」と「生活に困らない少し余裕があるお金」を総合的にプランするのが「キャリア・マネープラン」です。
3.自衛官のキャリアの特徴と社会人として求められる力
(1)自衛官キャリアの特徴
自衛官のキャリアは一般の会社員とは大きく違います。下の図は、自衛官と一般会社員とのキャリアの違いを示した図です。
自衛官のキャリアの特徴は、不連続性(ギャップがある)ではないでしょうか。一般企業ですと、今まで行ってきた仕事の延長線上で、再雇用などがあり、会社の文化や風習も同じで仕事内容も近いものがあります。しかし、自衛官の場合は、自衛隊の中で続けてきた仕事を定年後も続けられる人は一部で、多くの人は積み上げた役割や地位が大きく変化し、仕事の内容も異なる場合が多いのではないでしょうか。
さらに、求められる能力や仕事に臨む態度も違ってきます。自衛官の時は命ぜられたことを、正確に早く行うことが重要でしたが、民間では自分で考えて行動することが大切になってきます。
民間では、今まで働いてきた人を60歳以降も再雇用しているところが多く、60歳を過ぎると急に求人が限定されてくるという声もよく聞きます。また、経験や資格などがあると有利であることも多いようですが、自衛官は現役時代を通して民間で通用する専門性を身に付けるのが難しく、ほぼ体力勝負の仕事に就く方が多いのではないでしょか。また、一般にこの時期ですと、職を変えるごとに収入も減少します。
自衛官の現役を引退する前からスキルアップをして退官後の仕事に就くのが良いのですが、多くは準備する時間がないのが現状ですので、その後の再就職の時期において働きながら関連したスキルのアップを図るのが現実的かもしれません。
(2)社会人としての求められる力
経済産業省では、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力を「社会人基礎力(=3つの能力・12の能力要素)」として2006年に「社会人基礎力」としてまとめました。「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されています。さらに、「人生100年時代」の視点を取り入れ「人生100年時代の社会人基礎力」として、力を発揮するにあたって、自己を認識して振り返りながら、目的、学び、統合のバランスを図ることが重要となります。
経済産業省HPより
具体的には、以下の力が求められており、自衛隊時代とは同じ部分もありますが、違う部分も多いような気がします。全般的には「自ら考え、自ら行動して、多様な人とのつながりを生み出す」ことが求められているように思います。
①「前に踏み出す力」
指示待ちにならず、一人称で物事を捉え、自ら行動できるようになることが求められています。
②「考え抜く力」
論理的に答えを出すこと以上に、自ら課題提起し、解決のためのシナリオを描く、自律的な思考力が求められています。
③「チームで働く力」
グループ内の協調性だけに留まらす、多様な人々との繋がりや協働を生み出す力が求められています。
そして、自らこれらの能力を育てつつ、将来のどのように活躍するか、そしてそれを実現するために何を、どのように学ぶかを考えながら実行して行くことが大切だと思います。
自分の適性や自分にあった仕事を見付けるヒント
ご自分の適性やご自分にあった仕事を見付けるヒントとして「生涯を通じたキャリア・プランニング」及び「職業能力証明」の機能を担うツールであるジョブ・カードはとても有益です。そして、さらに「ジョブ・カード制度総合サイト」では、「自己理解」「仕事理解」の項目があり、簡単な検査でご自分の適性や仕事をチェックすることが出来ます。詳細をお知りになりたい方はVPI職業興味検査をお勧めします。
4.自衛官の資産の特徴
現役時代は、勤務していれば一定の給与が毎月入ってくるので、意識することはありあませんが、退官をすると働く時間や労働の価値によって給与が異なるので、改めて仕事の質と収入の関係を目の当たりにします。
そして、保有している資産は支出が増え、収入がないと減って行くという現実を突きつけられます。自衛官は、退職金も比較恵まれており、若退金もあるので、当初は働かずに過ごせるのではないかと錯覚をしてしまうことがあります。
しかし、一般に、自衛官は退官が55歳前後と早く、民間の完全退職年齢は65歳くらいであることを考えると、10年くらい早くなります。年金は65歳からですので、空白の10年間が出来てしまいます。退職金や若退金はありますが、この10年をカバーするには、働かざる負えないのが現実で、仕事とお金のプランは、まさに表裏一体となります。
下の図は民間の方と自衛官の資産の状況を示した図です。現役を退職するのが、10年くらい早い分、資産寿命も10年くらいは早くなります。この資産寿命を延ばす一番の手段は働くことです。資産寿命が10年短くなるなら、10年仕事寿命を延ばすことです。
(1)自衛官のキャリア・マネープラン
以上のように見てくると、自衛官は退官後のキャリアとマネーの状況は一般の会社員とは大きく違うことが分かります。このようなことから、一般の会社員ももちろんですが、自衛官には特に専用の「キャリア・マネープラン」が必要となってきます。下記に自衛官のキャリア・マネープランの概要についまとめてみました。
ここに書いたのは、一例ですので、退官後にアルバイトなどを中心にする人や、自営業を開始する場合など実際はそれぞれの方の状況で変わります。一般に、退官後に一般の会社(法人など)で働く場合はマネープランとしては現役時代からの継続性がありますが、アルバイトなどを中心に生活する人は、現役時代とは社会保険にシステムなど大きく違い、年金の支給額にも影響があります。また、自営業を行う方は、自衛官や会社員とは違い事業プランと一体となったマネープランが必要になってきます。
自衛官のキャリア・マネープランについて書いてきましたが、次に、仕事寿命を延ばしながら資産寿命をいかにして延ばすかをキャリ・アプランを考慮しながら一例を書いてみたいと思います。
5.キャリ・アプランを考慮した老後のマネープランの一例
自衛官のキャリアを考慮したマネープランでは、現役時代は防衛省の貯金の仕組みと、つみたてNISAを使った自分年金で老後の資産形成がよいのではないかと思っております。しかし、どうしても、リスクをゼロにはできません。
しかし、リスクを取らずに資産運用並みの収入を毎年確保する方法があります。それが年金の繰り下げです。しかし、年金の繰り下げを行うには、働くことにより収入を得ることが必要になります。まさに、これがキャリアとマネーが車の両輪であるという良い例だと思います。年金の繰り上げ、繰り下げでは、繰り上げ(もらう時期を早める)の場合は1か月あたりの0.4の減少ですが、繰り下げ(もらう時期を遅らせる)の場合は1か月当り0.7%の増加で75歳まで繰上げが可能で、最大84%の年金額の増加が見込まれます。
6.具体的な年金の繰り下げの一例
ご主人が、基礎年金と厚生年金、奥様が基礎年金だけの給付を受ける場合、ご夫婦で満額の基礎年金だけを5年間繰り下げたら、70歳からの基礎年金は毎年は60万円(夫婦合算)増えます。これは、2000万円を毎年3%で運用した際の利益と同じで、さらにリスクがないという素晴らしい内容です。また、この金額は平均的な生活者の生活費と年金額の差額にあたります。すなわち、平均的な生活をすれば、年金だけで生活できることをになり、資産を崩すことなく一生過ごせるという凄い内容です。人生100年時代、資産運用と年金の繰り下げとを両立させれば、さらに豊かな充実した時間を過ごすことが出来ると思います。
しかし、これを実行するには、65歳から70歳まえの5年間を働いて収入を得る必要があります。この時期になると、体力的には衰えてきているので、体力勝負の仕事は難しくなってきます。この時に威力を発揮するのが、資格、技能、経験などだと思います。確かに資格は大きな力になります。しかし、資格でなくても得意なもの、例えばカメラが趣味の方でも確かな腕があれば、収入になる可能性は十分にあると思います。
7.まとめ
自衛官の方のキャリア・マネープランを見て来ましたが、キャリアとマネーは充実した豊かな人生を歩むには車の両輪であり、この二つを考えながら定年後の人生プランを立てる必要がありると思います。しかし、そのためには、まずは健康が重要で、その上でスキルアップなどを図りながら付加価値の高い仕事などを行い収入を得て、年金を繰り下げながら、さらに豊かで充実した人生を歩んで頂ければと思っております。
※自衛官、自衛官OBの皆さんのお金とくらしのご相談、老後の年金のご相談は以下からお申し付け下さい。
WEB(Zoom)とメールによるご相談もお受けします。遠隔地の方はもとより、お近くの方でもお客様のお時間の節約のため是非ともご活用ください。