はじめに

いつも自衛官生活支援会のブログをお読み頂きありがとうございます。ブログでは年金の繰り下げで年金額を増やすことをお勧めしていますが、繰下げたにもかかわらず、思ったより増えないことがあるので、注意が必要です。今回は、年金の仕組みと、税金や社会保険料などの増加から、期待するほど増えない理由を分かり易く解説します。

年金の繰り下げで気を付ける二つのこと

①年金の仕組みから支給額が思ったよりも増えない!

年金の繰り下げでは最大42%増えます。しかし、基礎年金と厚生年金では繰り下げの仕組みが違うのです。基礎年金の場合は、5年間受給を繰り下げると、ほぼ、65歳時に支給される金額の42%の増加となりますが、厚生年金は違っています。

繰り下げると支給されなくなる給付がありますし、繰り下げの前提となる金額が額面通りでない場合があります。

1)基礎年金の繰り下げ

老齢基礎年金は満額でほぼ78万円です。 5年間受け取るのを我慢すると42%増の約110万円になります。振替加算と言う給付も付く場合がありますが、年間15000円程度ですのであまり気にしなくても良いと思います。

 2)厚生年金の繰下げ

老齢厚生年金は、現役時代に、 納めた保険料が違うので、人によってもらう額が違います。また、奥さんの年齢によっては、加給年金(224700円)が付く場合がありますが、繰り下げをした場合、この加給年金は貰えなくなってしまいます。さらに、在職老齢年金を支給されている場合は、繰り下げ対象額が減額された在職年金額と少なくなるため、年金の受け取りを我慢しても、思ったよりもずっと少なくなってしまう可能性があります。

基礎年金と厚生年金の繰り下げの仕組みを簡単に説明しましたが、基礎年金はほぼ計算どおり42%増になりますが、厚生年金は加給年金が貰えなくなり、さらに繰下げ対象額が少なくなる場合もあることがわかりました。

おすすめなのは、老齢基礎年金だけを繰り下げるという手段をとるということです。基礎年金と厚生年金は別々に繰り下げができますので基礎年金だけ繰り下げるのがお得ではないかと感じています。

②年金支給額が増えると、税金、社会保険料や医療費、介護保険費用も多くなり、手取り額が思ったよりも少ない!

年金の繰り下げをして、支給額が多くなったため、税金率や社会保険料が多くなり、手取りも少なくなりますが、さらに、医療費や介護保険では自己負担率が高くなるのです。

支給額が増えると、税金や社会保険料は多くなります。さらに医療費や介護保険の自己負担率が増加する場合があるのです。

たとえ、年金額が増えたとしても税金や社会保険料が増えてしまい、手取りの率が少なくなり、さらに、年金額が増えたことにより医療費や介護保険の費用の自己 負担率が多くなり、せっかく年金支給を我慢したにもかかわらず、思いのほか手取りが少なかったり、かえって、高い医療費や介護費用を払うことになってしまう可能性があるのです。

③具体的な例で説明しましょう

ここでは標準的な年金受給額を一例として、基礎年金だけを繰り下げた場合、基礎年金と厚生年金を繰り下げた場合のメリットとデメリットを具体的にお話したいと思います。

ご主人と3つ年下の奥さん(専業主婦)、年金額は平成30年の男性平均:基礎年金5万8775円、厚生年金16万3840円と女性平均:基礎年金5万3342円の場合で見てみましょう。

ご主人は、会社で65歳以降も36万円/月で継続雇用が決まりました。そこで、ご主人の年金を繰り下げることを検討しています。この時に留意した方が良いことをお話ししましょう。

まず、65歳からご主人が受け取れる年金を見てみますと、基礎年金と厚生年金の月額の12か月分と、奥さんが65歳になるまでに厚生年金に加算される加給年金(22万4700円)で、約290万/年で、月額約24万円となります。

この年金を5年間受給を我慢すると1.42倍になるので、期待する金額としては約412万円/年(約34万円/月)となり、この金額であれば何とかなりそうだと思いそうです。

しかし、その金額は!!

1)厚生年金を繰り下げると加給年金が支給されない。

本来であれば、奥さんが65歳になるまでに支給される3年間の加給年金額の約67万円が支給されません。

2)在職老齢年金で停止される年金は繰り下げの対象とはならない

まず、在職老齢年金ですが、毎月のお給料36万円と現金の月額16万円の合計額が47万円を超えると、その差額の1/2が年金から引かれます。この場合ですと、(36+16-47)/2となり約2.5万円です。この12か月分の約30万円が年金から引かれます。本来であれば、約197万円(厚生年金のみ)であるはずが、約30万円引かれて約167万円となり、この金額が繰り下げの対象額となるのです。5年間で本来であれば197万円の1.42倍の約280万円のはずが、約167万円の1.42倍の約237万円となり、年間43万円も少なくなります。

一方、基礎年金を繰り下げる場合は男子の平均5万8775円の1.42倍の12か月となり年間約100万円になります。

基礎年金と厚生年金を繰り下げて期待した金額は、約412万円/年(約34万円/月)ですが、実際は約337万円/年(約28万円/月)となるのです。ガッカリですね

3)税金や社会保険料の増加でさらに手取りの割合が減少する。

下の表は、税金や社会保険料(神奈川、横浜)を考慮した手取り率をグラフにしたものです。

5年間繰り下げた場合は、基礎年金の約100万円と厚生年金の237万円の合計の337万円となります。グラフから手取り率は0.86となり手取りは約290万円となります年金制度や税などによる減少を考慮しない額面通りの期待額の約412万円よりも122万円も少ない額しか手元に入らないことになります。さらに、ご主人に万が一の場合があった時に支給される遺族厚生年金の額は、繰り下げで増加した老齢厚生年金額をベースに計算するのではなく、増加前の額をベースに計算するのです。愕然としますね。年金の繰り下げを推奨するのであれば、もっと有利になるように制度を整備してもらいたいものです

まとめ

年金の繰り下げをしても、思ったより支給額が少なく、さらに、税金や社会保険料を差し引かれるので、手取りは更に少なくなります。また、増加した年金により、医療保険の負担割合が増加(75歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を1割から2割に引き上げる医療制度改革関連法が2021年6月4日の参院本会議で、自民・公明両党などの賛成多数で可決、成立しました。単身世帯は年金を含めて年収200万円以上、複数世帯では合計320万円以上が対象になります。)したりしますので、注意しましょう。年金の繰り下げは老後資金の頼みの綱である年金額を増やすには、とてもよい制度だと思います。しかし、年金、医療保険制度なの社会保険や税の仕組みを知らないと、将来のライフプランを狂わしかねないことになるので注意が必要です。

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